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弁護士松澤良人のページ

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債務整理(借金整理)の内容

 債務整理の方法は、大きく分けると、裁判所が関与するものと、ほとんど関与しないものとに分けられます。裁判所が関与するものが、@自己破産手続、A個人再生手続、C特定調停の3つで、裁判所がほとんど関与しないものが、B債務任意整理です。
 それぞれについて、以下に簡単にご説明します。

1 @自己破産手続

 破産とは、貴方の財産・収入より、借金などの債務のほうが多くなってしまった場合に、貴方の財産をお金に換(か)えて、そのお金を貸主などの債権者に対して公平に分配し、借金などの債務をこれ以上支払わなくてもよいようにする制度です。
 貴方の財産をお金に換える手続は、裁判所が選んだ破産管財人(はさんかんざいにん)が行いますが、貴方の財産の程度によっては、破産管財人が選ばれることなく破産手続が終了します。
 こういう場合を「同時廃止(どうじはいし)」と言います。

 したがって、貴方の財産を処分してお金に換えるという手続きは行われません。なお、同時廃止になるか否かは、あなたがどのような資産をどの程度持っているかによって、一定の基準に基づいて裁判所が判断します。詳(くわ)しくは弁護士にお尋(たず)ね下さい。

 また、破産者になっても、戸籍や住民票に「破産者」と書かれることはなく、選挙権を失うこともありません。
 
ただし、破産手続が始まってから、裁判所による免責許可が下りるまでは、市町村において身分証明書を取得する際、破産手続開始決定を受けていない旨の事実を証明してもらうことはできませんし、警備員、保険外交員、宅地建物取引業者など、一定の職業につけなくなりますので、ご注意ください。もっとも、免責許可が下りれば、こういった制限はなくなりますので、ご安心ください。

  なお、破産手続が始まった後、裁判所から「免責許可決定」を受けることにより、残っている借金など、債務の支払いをしなくてもよいようになります。

  ただし、免責の許可が下りても、税金や社会保険料の滞納金や、わざと、もしくは、とんでもない不注意で人を殺したり、傷つけてしまったりしたような場合の損害賠償(そんがいばいしょう)債務、離婚した後、相手のもとで育てられることになった子どもに支払う養育費等については、そもそも免責の対象とはなりません。

 また、免責の目的は、誠実な債務者に立ち直る機会を与えるというものですから、以下のような事情がある場合には、免責が受けられません(以下のような事情を、「免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)」と言います。)。

  ・貸主などの債権者に損害を与える目的で自分の財産を隠したような場合
  ・無駄づかいやギャンブルで、持っている財産を減らしたり、借金などの債務を増やしたような場合
  ・クレジットで商品を購入し、すぐにその商品を業者に転売して現金化したような場合
  ・すでに借金などの債務を返すことができない状態であるのに、そのことを隠して、さらにお金を借りたような場合
  ・以前にも破産手続で免責の許可を受けたことがあり、それから7年たっていない場合

 なお、これらの事情があっても、裁判所の判断により、借金などの債務の一部を自分から支払ったり、反省文を書いたりすることで、免責してもらえる場合もあります。詳しくは弁護士にお尋ね下さい。

2 A個人再生手続

 個人再生手続とは、自分の財産や収入を全部つかっても、借金など全ての債務を支払えなくなるおそれのある場合に、借金などの債務を少なくしてもらったうえで、その少なくしてもらった債務を分割で返済していくという再生計画を裁判所に許可してもらって、残りの支払義務を免除してもらう制度です。

 破産・免責手続と違って、職業の制限や免責不許可事由などの制限はありませんし、住宅ローンがある場合でも住宅を手放すことなく負債の整理が可能です(ただし、住宅ローン以外の債務について、住宅に住宅ローン以外の抵当権などの担保が付けられていた場合は除きます)。

 もっとも、この手続きをとるためには、これから定期的な収入が見こめる、あるいは給料などの定期的収入を過去2年間にわたって受け取っているなど、収入に関する要件が必要となります。また、返済は原則として3年間の分割払いとなっています。住宅ローンを除く債務を合計した金額が5000万円を超えてしまう場合には、この手続を利用することができません。

 なお、いくら借金などの債務を少なくしてもらえるとは言っても、これ以上は少なくしてもらえないという最低弁済額が決められていて、これは、原則として、

 住宅ローンを除く債務の合計が1500万円までの場合、その5分の1の返済(但し、最低100万円)
 住宅ローンを除く債務額が1500万円〜3000万円の場合には300万円の返済。
 住宅ローンを除く債務額が3000万円〜5000万円の場合は10分の1の返済。

とされています。
 たとえば、全ての債務の合計金額が1000万円だった場合、200万円より少なくはなりません。また、貴方の資産の状況や年収によっては、この最低額以上の金額を支払わなくてはいけない場合があります。具体的な目安については弁護士にお尋ね下さい。

3 B債務任意整理

 債務任意整理とは、裁判所の手続を利用するのではなく、弁護士が、サラ金業者などの各債権者に対して、個別に返済額や支払方法などについて交渉を行うというものです。

 具体的には、サラ金業者などの債権者から、貴方と債権者との間のこれまでの取引の記録を提出してもらったうえで、利息制限法という法律に基づいて、利息や元本の充当について引き直し計算を行って残元本を算出します。

 要するに、サラ金業者などの債権者は、法律で決められた以上の利息を貴方から受け取っていたわけですから、きちんと法律で決められた利息に引き直して計算して、貴方の借金が本当はいくらなのかを確定するということです。

 
そして、この引き直された元本を基準に、返済方法を話し合うというものです。サラ金業者などの債権者と長い間取引がなされているような場合には、払いすぎた貴方の利息もかなりの金額になっているものと思われますので、残元本をかなり少なくできる場合もあります。

 場合によっては、払いすぎた貴方の利息が多すぎて、残元本がゼロになるどころか、払いすぎた利息分のお金(いわゆる「過払金(かばらいきん)」と呼ばれるものです。)を返してもらえることもあります。

 ただし、クレジットによる物品購入(ショッピング)の場合には利息制限法の適用がありませんので、債務金額を少なくすることは困難です。

 したがって、サラ金業者等と長い付き合いがあり、物品購入によるクレジット残債務金額はそんなに多くないという方に向いているといえます。
 もっとも、あくまで話し合いですので、相手方がこちらの提示した返済案に納得しない限り合意できませんし、そもそも取引履歴を一切出さないという悪い業者もおりますので、債務任意整理が可能かどうかは正にケースバイケースです。具体的な見こみについては弁護士にお尋ね下さい。
 
4 C特定調停

 特定調停とは、自分の財産や収入を全部つかっても、借金など全ての債務を支払えなくなるおそれのある場合に、簡易裁判所(かんいさいばんしょ)において、サラ金業者などの債権者との間で、返済金額や支払方法などについて話し合いをする手続です。お互いが合意する内容どおりの返済を行っていくわけですから、返済が可能な程度の収入が貴方にあることが前提となります。

 特定調停の場合も、任意整理と同様に、利息制限法による引き直し計算を行い、計算後の残債務金額が解決の基準となります。したがって、内容的には任意整理とほぼ同じですが、簡易裁判所の調停手続において行うという点が異なります。

 もっとも、あくまで話し合いですので、相手方がこちらの提示した返済案に納得しない場合は不成立となります。また、裁判所は、原則として中立的な立場に立ちますので、業者と貴方との間の知識や交渉能力の差によっては、必ずしも妥当な解決が図られない場合もあります。

5 受任通知について

 上記のいずれの手続を選択するにせよ、弁護士が負債整理を依頼され、正式に受任した場合には、債権者宛てに受任通知(じゅにんつうち)という文書を発送します。

 そうすると、貸金業者は、原則として,貴方に対して直接支払を請求することができなくなります。

 
なぜなら、貸金業者は、貸金業法という法律により、弁護士から受任通知を受けた後は、正当な理由なく債務者に支払請求をすることが禁止されているからです。

 つまり、貸金業者の取り立てを止めさせるためには、受任通知を発送する必要があるのですが、そのためには債権者である貸金業者等の名称、支店名、住所、郵便番号などをできるだけ正確に把握する必要があります。

 もちろん、ある程度の情報があれば、弁護士が調査して、債権者の所在地などを明らかに出来る場合もありますが、貴方の債権者がどこのだれであるのかは、結局のところ貴方しか分かりません。ですので、弁護士に負債整理を相談する場合には、債権者の名称、支店名、住所、郵便番号、およその債務額をできる限り正確に記入したメモのようなものを持参していただけると、その後の手続きが正確かつ迅速に進みます。

 なお、上記いずれの手続きを採るにせよ、信用情報機関への事故登録(いわゆるブラックリスト)は避けられません。従って、普通の消費者金融機関からは借入れができなくなります。くれぐれもヤミ金融等には手を出さないよう注意して下さい。


ドロップシッピングについて(ネット消費者被害)

第1 はじめに

 1 ドロップシッピングとは

まず,一般に「ドロップシッピング(Drop Shipping)」とは,日本語では「直送」を意味する流通用語であり,インターネット上における商品の広告又は販売の一形態を指す。具体的には,ネットショップ運営者がネットショップを通じて商品等を閲覧者に販売した場合に,販売したネットショップ運営者自身が商品の仕入・発送するのではなく,製造元や卸元が直接発送を行う取引形態をいう。

ネットショップ運営者は,販売価格を自ら設定して販売し,仕入価格との差額分がネットショップ運営者の利益となる。また,ネットショップは注文を受け次第,注文情報を製造元ないしは卸元に転送することで,商品の発送を製造元ないし卸元に代行してもらうことで,在庫を持たずにネットショップを開設することが出来るメリットがある。

2 ドロップシッピングサービス提供業者(以下「業者」という)のシステムについて

業者のシステムは,上記「ドロップシッピング」の取引形態に関し,ネットショップ初心者が敬遠するネットショップ構築作業,集客作業,マーケティング,商材選択,在庫管理,代金精算に至るまでネットショップ運営に関する主要な作業内容全てを業者が行い,顧客は,商品選択,代金設定,注文処理,商品代金の入金確認,仕入代金の送金といったネットショップ運営に関する一部の作業に従事することによって当該ネットショップでの商品販売から得られる利益を簡便に得られるものと謳うものである。

 3 業者と被害者との契約内容(代表例)

  (1) 業者が提供する役務ないし商品

     ア ネットショップ構築

       業者は,被害者固有のネットショップ開設に必要な作業(ホームページの制作,※1ドメイン取得,※2サーバ管理,※3コーディング等)を行い,被害者において商品展示・代金設定及び商品購入者(被害者のネットショップから商品を購入する者;以下「顧客」という。)から具体的注文を受け付けられる仕組みを組み込む。

              ※1 ドメインとは,インターネット上に存在するコンピュータネットワークを識別するために付けられている名前の一種。インターネット上の住所のようなもので,重複しないように発行・管理されている。アルファベット,数字,一部の記号の組み合わせで構成される。近年では,日本語など各国独自の言語・文字でドメインを登録できる国際化ドメイン名も利用できるようになった。

ネット上のコンピュータ同士はIPアドレスによってお互いを識別し,通信を行なっているが,数字の羅列であるIPアドレスは人間にとっては扱いにくいため,別名としてドメインを運用するようになった。ドメインとIPアドレスを対応させるシステムDNSと呼ばれ,全世界のDNSサーバが連携して運用されている。一つのドメインに複数のIPアドレスを対応させたり,一つのIPアドレスに複数のドメインを対応させることもできる。

         ※2 サーバとは一体何か。サーバの役割を考えてみるとよい。もともと「server(=サーバ)」とは「ネットワークで繋がったコンピュータ上で他のコンピュータにファイルやデータ等を提供するコンピュータ,またそのプログラム」を指す。サーバからファイルやデータなどを受け取る側を「client(=クライアント)」という。

サーバはコンピュータとコンピュータの真ん中にあって,色々な「リクエスト」に応えている。メールの確認もデータの受け渡しもウェブページ閲覧も全てクライアントであるコンピュータのリクエストにサーバが応えているのである。

         ※3 プログラミング言語コンピュータプログラムコンピュータ へ計算などをさせる命令を組み合わせた文書)を記述するために使われる人工言語】を用いてソースソフトとして稼動可能なプログラムを構成している元テキスト)ファイルを作成すること。

     イ 集客作業

       業者は,ネットショップ開設による集客作業に加え,商品情報のアップや原稿作成を基本として,被害者が選択したコース内容に応じて,メルマガ機能,ブログ設置,ネットショップのSEO対策(ヤフーやグーグル等のサーチエンジンで検索結果の上位に表示されるようにすること。),広告プロモーション・広告掲載,集客サイトへのリンク等を行い,さらなる集客力強化を行う。

     ウ 商材選択,在庫管理

業者は,独自のマーケティング調査の上,顧客のニーズに合わせた商品を商材として選択し,会員制サイト上にて2万点以上の取扱商品名と卸価格一覧を被害者の閲覧に供する。

取扱商品については,業者において,販売に必要な数量を確保するか,具体的納期に間に合うように仕入先から調達しうる状況を確保し,その際の仕入価格は,業界最安値のものとする。

エ 商品発送

被害者がネットショップにて展示した商品について顧客より注文を受けた後,業者は,被害者より出される発送依頼に対応し,具体的納期に従い,対象商品を顧客へ直接発送する。

     オ 代金精算

業者は,被害者が顧客より入金を受けた金員の中から,仕入代金分の入金を受ける。

(2) 被害者が業者に対して負担する義務ないし作業

     ア 対価の支払

被害者は,業者からの上記役務の提供を受ける前提として,本件各契約の初期費用(商材代金)を業者に支払う。

     イ 商品選択,代金設定

業者が提供を約束する取扱商品(契約後閲覧可能となる会員制サイトに掲載)の中から,具体的商品(ゲーム機や家電製品,食品,チケット等)を選択し,代金を設定する。

     ウ 注文処理

ショッピングサイトを通じて顧客から購入注文があった場合,顧客に対し事前に業者より提供されたテンプレートに従い,注文確認と入金先口座等の説明を記載したメールを返信し,また,業者に対して商品発送依頼のメールを送信する。

     エ 商品代金の入金確認,仕入代金の送金

被害者は顧客から自己の口座に販売代金の入金を受けたことを確認した後,業者に対して,具体的商品の仕入代金を業者口座に送金する。

 4 ドロップシッピング商法の問題点(但し,必ずしも全事例に当てはまるものではないものと思われる。)

  (1) 業者の勧誘文句と売り上げの低迷

      業者は,被害者に対し,「初心者でも自宅で高額の副収入が得られる。」「リスクなしで稼ぐ。」「収益を安定して稼ぐ。」「月○○万円の収入を確約する。」など,あたかも,業者が構築したネットショップを利用すれば,安定した売上や収益が見込める旨断定的に説明する。

      しかし,業者が構築するネットショップには集客力が無く,被害者は,ネットショップ開設当初から,ほとんど注文を受けることがない。

(2) 業者が,集客,広告等をしない

      業者の構築したネットショップに何ら集客力が無いのは前述したが,それのみならず,業者は,約束に応じたSEO対策,広告・プロモーションといった付加サービスを殆ど(全く)しない。

  (3) 被害者がネットショップ上に陳列するために選択できる商品が少ない

      業者は,当初,多くの商品(2万点以上と謳われることもある。)の中から被害者が任意に販売商品を選択できると説明するが,実際には,その半数にも満たない商品しか選択できず,また,敢えてその中から選択しても,短期間のうちに,在庫が無いなどの理由で取扱停止になってしまう。

  (4) 業者が在庫を確保せず,在庫管理をしない

      業者は,ドロップシッピングの特長として,在庫を持たずに商売ができる点を挙げ,そのことを勧誘材料のひとつにする。

      しかし,仮に顧客から注文があったとしても,業者において在庫の確保をしていないため,顧客と被害者との間の売買契約がキャンセルされることがある。

      また,業者の顧客に対する商品の発送が長期に渡り遅延することにより,契約がご破算になることもある。

  (5) 業者が仕入れ価格を一方的に上げる

      業者は,仕入れ価格が「業界最安値」であると謳い,被害者を勧誘する。

      しかし,業者は,有名メーカーの売れ筋商品などにつき,ごく短期間で,被害者に対する卸価格を,一方的に,一般の量販店並みにつり上げてしまう。

      そのため,被害者は,当初見込んでいた利益をほとんど確保できなくなってしまう。

第2 被害者保護のための法律構成

 1 ※特定商取引法(特商法)のクーリングオフ解除(同法581項)

 2 不実告知(事実の不告知)による取消(特商法58条の21項,消費者契約法411号)

 3 断定的判断の提供による取消(消費者契約法412号)

 4 詐欺取消ないし錯誤無効(民法95条,96条)

 5 不法行為(民法709条等)

などが考えられる。

 ※ ドロップシッピング商法が,特定商取引法上の業務提供誘因販売取引業にあたるか

  (1) 業務提供誘因販売取引業とは

      「業務提供誘因販売取引業」とは,@「商品の販売」A「商品の販売のあっせん」B「有償で行う役務の提供」C「有償で行う役務の提供のあっせん」のいずれかの事業であって,「業務提供誘因販売取引」をするものをいう(特商法51条1項)。

  (2) 業務提供誘因販売取引とは

      「業務提供誘因販売取引」とは,@「業務提供利益(内職商法やモニター料等)を収受し得ることをもって相手方を誘引し」,A「その者と特定負担(商品購入代金,役務の対価,取引料等の支払い)を伴う」B「商品の販売・あっせん,役務提供・あっせんに係る取引(取引条件の変更を含む)」をいう。

  (3) ドロップシッピング商法が業務提供誘因販売取引業に当たるか

     ア 業者は,被害者に対し,前述のように,初期費用を支払わせた上で,ネットショップを構築したり,商品を卸したりするものであるから,@商品の販売ないしB有償で行う役務の提供を業として行うものであるといえる。

     イ では,ドロップシッピング商法が「業務提供誘因販売取引」であるといえるか。

      (ア) 業者は,前述「ドロップシッピング」の取引形態におけるネットショップ運営業務の一部(商品選択,注文処理等)に従事することで,当該ネットショップでの収益を収受し得ることをもって(確約して)被害者を誘引しているので,@「業務提供利益を収受し得ることをもって相手方(被害者)を誘引し」たといえる。

          なお,被害者は,前述のように,業者が提供するネットショップ構築などの役務や商品を利用して上記収益を収受するものとされる。

      (イ) また,ドロップシッピング商法において,被害者は,業者が提供するネットショップ構築などの役務やシステムの対価として初期費用を支払うものであり,かつ,業者は,(その説明によれば,)被害者に対し,ネットショップ構築,集客(質問事案では,業者が「顧客をうちが紹介する」とまで言っている。)などの役務の提供を行ったり,商品を卸したりするものであるから,同商法が,A「その者(被害者)と特定負担(商品購入代金,役務の対価,取引料等の支払い)を伴う」B「役務提供・・に係る取引」であることも明らかである。

      (ウ) よって,ドロップシッピング商法は,業務提供誘因販売取引業に当たる。

  (4) なお,被害者は,ネットショップ運営業務の一部(商品選択,注文処理等)を自らパソコン上で行うに過ぎないものと思われ,「その業務提供誘因販売業に関して提供され・・る業務を・・事業所等によらないで行う個人」(特商法52条,55条等)であるといえるから,特商法52条,55条等の適用にも問題はない。




(不動産勉強会レジュメ 編集松澤良人)

不動産賃貸借契約における特約の効力

第1 借地に関する特約の効力

 1 使用目的,用途等に関する特約

  (1) 序論

      土地の賃貸借契約に際しては,通常,土地の使用目的のほか,借地上に築造する建物の種類,構造,規模,用途等の借地条件を定めるが,これは土地賃貸借契約の基本的な内容そのものであって,当事者が自由に定めることができる。

      しかし,使用目的が建物の所有にあるとされれば,借地借家法により借主は強く保護される。また,借地条件に関しても,これに違反したからといって直ちに契約解除が認められるわけではない。

      以下,特約と事案に即して検討する。

  (2) 土地をゴルフ練習場として使用するとの特約があった場合

     ア 問題点

       借主が,「ゴルフ練習場には,その経営上,事務所用の建物が必要なのだから,借地法(借地借家法)の適用がある。」と言ってきた場合,実際に借地法(借地借家法)の適用があるのか。

     イ 結論

       ゴルフ練習場として使用する目的で土地の賃貸借がされた場合には,たとえ当初からその土地上にゴルフ練習場の経営に必要な事務所用等の建物を築造,所有することが予定されていたとしても,特段の事情がない限り,その土地の賃貸借は,借地法1条(借地借家法1条)にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」賃貸借ということはできない(最判昭和42年12月5日)。

  (3) 土地上に建築する建物を,主として貯炭場を設けるための小規模の木造建物に限るとの特約があった場合

     ア 問題点

       借主が,消防署の命により堅固な石油貯蔵庫を建築したことが,賃貸物の用法違反となるか。

     イ 結論

       借地の用法を主として貯炭場を設けるためと定め,建物の建築として木造の小規模のものに限るとの特約のもとでなされた土地賃貸借契約において,賃借人が賃貸人の事前の明白な拒否にもかかわらず,借地上に石油類販売用のコンクリートブロック造の堅固な石油貯蔵庫を建築することは,賃借物の用法違反をきたすものというべく,当該石油貯蔵庫の建築が消防署の命によって従前の木造をコンクリートブロック造に改めたという事情によるものであっても,右事情は用法違反の違法性を阻却する事由とはならない(最判昭和39年6月19日)。

 2 一時使用の特約

  (1) 序論

      借地法や借地借家法上,建物所有目的の借地権の期間については,基本的に長期とされる。

      もっとも,「臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」には,借地法2条もしくは借地借家法3条の規定は適用無く,短期間の期間の定めも有効となる。

      このうち,「臨時設備」とあるのは,建設工事現場の飯場,住宅展示場,一時的興行施設など,建物所有により意図される目的が一時的なるもので,その目的が終了すれば建物を所有する理由も無くなるものとされている。他方,「その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合」に関しては,賃貸借に至った動機,経緯,契約内容,契約条項などの当事者の意思を推測できる事情及び土地の状況,建物の所有目的(用途等),規模,構造など借地借家法適用の是非が判断できる客観的事情を総合的に判断するほかない(最判昭和43年3月28日)。

      なお,借地借家法制定以降は,事業用借地権(同法23条2項)や事業用定期借地権(同条1項),定期借地権(同法22条),建物譲渡特約付借地権(同法24条)などを設定すればある程度の融通がきく。それでもなおこのような定期借地権等の手続をとらずに設定された借地権で一時使用の借地権と判断せざるを得ないものもあり,一時借地権か否かの判定は,今日においてもなお重要であることはいうまでもない。

  (2) 賃貸期間を区画整理事業実施の時までとする特約があった場合

     ア 問題点

       このような特約がある場合,一時使用の賃貸借と認められるか。

     イ 結論

       土地所有者が,その土地の一部を建物所有の目的で賃貸し,賃借人がこれに店舗を建築した後残りの部分に居宅を建築することを黙認していた場合に,契約の当初,上記土地が特別都市計画法による区画整理区域内にありその一部が道路敷となることに決定していたため,賃貸人は,上記区画整理実施の時まで一時賃貸する意思で契約し,残りの部分についても最初の賃貸部分と同時に返還を受ける意思で使用を黙認し,賃借人も賃貸人の上記意思を知りかつこれを承認していたものであって,そのため契約書にも,期間を1年,賃料を1日50銭と記載した外,「臨時借受」の文字を使用した事情にあるときは,たとえ上記建物が良好な資材を用いた本建築で,賃貸人がその建築を承認したうえ落成に際し,祝品を贈り,かつ自ら上記店舗を借り受け1年余にわたり使用していたなどの事情があっても,上記借地権は,期間を区画整理実施の時までとする一時使用のためのものと認めるのが相当(最判昭和32年2月7日)。

  (3) 裁判上の和解で,期間10年余と定めて賃貸借契約をし,期間満了と同時に建物を収去して土地を明け渡す旨の特約があった場合

     ア 問題点

       このような特約があった場合,一時使用賃貸借に該当するか。

     イ 結論

       裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても,土地の利用目的,地上建物の種類,設備,構造,賃貸期間等諸般の事情から,賃貸借当事者間に短期間に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には,上記賃貸借は,借地法9条にいう一時使用賃貸借に該当し,同法11条の適用を受けないと解すべきである(最判昭和43年3月28日)。

  (4) 土地の不法占拠者との紛争解決のために賃貸借契約をし,10年後に必ず返すとの特約があった場合

     ア 問題点

このような特約があった場合,一時使用賃貸借に該当するか。

     イ 結論

       土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申し立てたところ,その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し,なお居住者が多数あることが判明したので,事態の解決を計るため,調停外において上記居住者中の有力者1名と期間を10年とする土地賃貸借契約を結び,10年後には必ず返地することを確約したときは,たとい契約に際し権利金を授受し,その後賃料を増額したことがあっても,借地法9条にいう一時使用のため借地権を設定したこと明らかな場合に該当する(最判昭和36年7月6日)。

  (5) 借地期間は地主の長男が医業を開始するまでとの特約があった場合

     ア 問題点

       このような特約があった場合,一時使用賃貸借に該当するか。

     イ 結論

       地主の長男が医学修行中であり,卒業後その土地で医業を開始することを予定していたので,借地期間を上記医業開始確定の時までとするため,契約にあたり,地上に建築せらるべき建物を戦災復旧用建坪15坪のバラック住宅と限定し,とくに一時使用を条件とする旨契約書に明記されていた場合には,たとえ上記開業時期が明確に定まっていなかったため,一応期間を3年とし,その後も,開業に至らずして期間を更新し,またその間に借地権譲渡,地代増額等の事情があっても,一時使用のための借地権というを妨げない(最判昭和37年2月6日)。

 3 賃料改定に関する特約

  (1) 序論

      賃料は本来当事者間の合意で自由に定められるべきものであるから,賃料改定に関する特約も基本的にはその有効性が認められるべきで,判例・学説もその有効性を承認している。

他方,借地借家法11条1項(借地法12条)は,賃料が不相当となったときは,「契約の条件にかかわらず」賃料を増減請求することができる旨規定されていることから,実質的に強行法規としての性格を有するものと解されていることもあり,賃料改定に関する合意の効力が問題となる。

      賃料改定に関する特約であるが,一定の期間,賃料を増額しない旨の特約が有効であることは上記条項の認めるところである。その他の特約,例えば,一定の期間経過毎に自動的に一定割合が増額される特約(賃料自動増額特約),賃料は一定期間経過毎に見直され,予め合意された経済指数等にスライドして改定額を決定する旨の特約(賃料スライド条項特約),賃料は将来とも減額しない旨の特約(賃料不減額特約),賃料は一定期間経過毎に当事者協議して定める旨の特約(賃料協議条項)などは,それぞれ,当該賃貸借の種類,契約の経緯,その他の契約条件(例えば権利金の授受の有無等)により,それとの関係でこれらの特約が定まるものである。

      したがって,各特約の効力については,その賃貸借契約及びその他諸般の事情により判断するほかないが,この場合,上記条項の強行法規制を前面に出せば,かかる特約が存在する場合であっても,当事者には賃料増減請求の機会を与え,その上で具体的な賃料額の決定にあたっては,特約が定められるに至った事情等を考慮して,賃料増減請求の当否(同請求権行使の要件充足性)を考慮すれば足りるとするのが,判例の傾向である。

  (2) 将来の賃料は賃貸借の当事者が協議して定める旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる特約があったにもかかわらず,協議を経ないでなされた賃料増額請求の意思表示は無効となるか。

     イ 結論

       建物所有を目的とする土地の賃貸借契約において将来の賃料は当事者が協議して定める旨の約束がされた場合でも,当事者が賃料増減の意思表示前に予め協議を経ず,また,意思表示後の協議が当事者相互の事情により進まないため更にその協議を尽くさなかったからといって,賃料増減の意思表示が無効となるものではない(最判昭和56年4月20日)。

  (3) 土地の賃貸借において,期間を35年と定め,賃料はこの間3年毎に見直し,1回目は15%,2回目以降は各10%増額する旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる地代自動改定特約がある場合に,賃料減額請求権の行使は認められるか。

     イ 結論

       地代等自動改定特約において,地代等の改定基準を定めるにあたって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等減額請求権の行使を妨げられない(最判平成15年6月12日)。

  (4) 土地の賃貸借において,3年毎に消費者物価指数の変動率等により賃料を改定するが,同変動率が下降しても賃料は減額しない旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる特約は有効か。

     イ 結論

       建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において,3年毎に賃料の改定を行うものとし,改定後の賃料は,従前の賃料に消費者物価指数の変動率を乗じ,公租公課の増減額を加算または控除した額とするが,消費者物価指数が下降してもそれに応じて賃料の減額をすることはない旨の特約が存する場合であっても,上記契約の当事者は,そのことにより借地借家法11条1項に基づく賃料減額請求権の行使を妨げられるものではない(最判平成16年6月29日)。

 4 増改築禁止特約

  (1) 序論

      土地の賃貸借契約において,「増改築をしてはならない。」「賃貸人の承諾なく増改築してはならない。」など,建物の増改築を制限する旨の特約が付されることが少なくない。

      増改築禁止特約が有効であれば,建物買取請求権が行使された場合における建物代金の高騰を防ぐ,借地期間満了時の正当事由の一つとして建物の老廃度が考慮される,などの点で賃貸人にとっては有利である。

他方,借地人としては,借地契約の目的の範囲内で最有効の土地利用が図れなくなる点で不利となる。そうとすれば,借地人保護という借地(借家)法の趣旨から,増改築禁止特約は借地人に不利な規定として無効となるのではないかという問題が生じる。

      この点,無効とする学説も存在するが,通説及び判例は,増改築禁止特約は借地法,借地借家法の強行法規に反せず有効と解している。ただし,増改築禁止特約に違反した行為のすべてに解除権の行使ができるわけではなく,その増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは,賃貸人は上記特約に基づき解除権を行使することは許されないとするのが確定した判例である。

      ところで,増改築制限特約がある場合に,地主が増改築を承諾しないときは,借地人は裁判所に対して承諾に代わる許可の裁判を申立てることができる。この許可の裁判を申し立てることなく増改築してしまった場合にも,直ちに解除権が行使されるということはなく,許可の申立てをすることなく増改築したことが,上記信頼関係を破壊するおそれがあるか否かの判断の一要素として考慮されるにすぎない。

  (2) 土地の賃貸借において,賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築したときは,催告なしに契約を解除することができる旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる特約に基づきなした賃貸人による無催告解除は有効か。

     イ 結論

      @ 建物所有を目的とする土地の賃貸借中に,賃借人が賃貸人の承諾を得ないで借地内の建物の増改築をするときは,賃貸人は催告を要しないで賃貸借を解除することができる旨の特約があるにもかかわらず,賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合において,増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは,賃貸人は,前記特約に基づき,解除権を行使することは許されないものというべきである。

      A 前期の特約がある場合において,借地人がその居住用建物の一部の根太などを取り換え,2階部分を拡張してアパート用居室として他人に賃貸するように改造したが住宅用普通建物として前後同一であるなど判示事実のもとでは,賃貸人が上記特約に基づいてした解除権の行使は,その効力を生じないと認めるのが相当である(最判昭和41年4月21日)。

  (3) 土地上の建物を工場,倉庫のみに使用しそれ以外には使用しないこと及び上記使用目的変更のために増改築しないこと,賃借人がこれに違背したときは賃貸人は契約を解除できる旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる特約の下,賃借人が工場用建物に間仕切りを作り,中2階を2階に改造して店舗兼居宅及び貸間に増改築した場合,契約解除は認められるか。

     イ 結論

       借地契約に解除権留保付増改築禁止の特約がある場合において,借地人が地上の工場用建物に間仕切りを作り,中2階の柱に継ぎ柱をして2階建てとし,店舗兼居宅及び貸間として他人に賃貸するように改造したが,上記増改築は,その態様において建物所有を目的とする借地人の土地の通常の利用上相当というべきであり,賃貸人に著しい影響を及ぼすものではなく,また借地人の一家の経済的苦境を脱するためにされたものであるなど判示事実のもとでは,賃貸人が上記特約に基づいてした解除権の行使は,信義則上許されない(最判昭和51年6月3日)。

  (4) 賃借人がその所有建物を改築又は増築するときは,賃貸人の承諾を受けなければならない旨の特約があった場合

     ア 問題点

かかる特約の下,賃借人が旧建物の1階を約1.4倍,2階を3倍に拡張して仮設建物を増築し,会社の従業員の居宅等にした場合,契約解除は認められるか。

     イ 結論

       借地上の建物に対し無断増築禁止の特約に違反して増築がなされた場合であっても,賃貸人が改築については予め承諾していたこと,賃借人が上記建物拡張の必要に迫られていたこと,増築部分が除却の容易な仮設的建物であり,耐用年数も短いこと等判示の事情の存するときは,上記増築をもって賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないものであり,解除は認められない(東京高判昭和52年2月24日)。

  (5) 建物を大修善するときは賃貸人の書面による承諾を要し,これに違反した場合には賃借権を放棄したものとみなす旨の調停条項があった場合

     ア 問題点

       かかる調停条項がある場合において,火災により建物が焼失した後,焼け残りの材料で建物を築造した場合,契約解除は認められるか。

     イ 結論

       借地契約における大修善禁止特約に違反し,火災により焼け残った柱,壁等を利用して平屋建物を築造したとしても,当事者間の信頼関係を破壊するに足りるものとは認められず,解除は認められない(名古屋高判昭和54年6月27日)。

  (6) 増改築禁止特約はあるが,土地賃借人が行う土地上の建物の屋根・玄関扉部分等の補修工事及び羽目板取替工事を土地賃貸人が妨害しない旨の裁判上の和解が成立していた場合

     ア 問題点

       かかる特約及び和解の下,賃借人は建築業者に工事を頼んだところ,上記業者から土台・柱・屋根下地板・屋根瓦が弱っていることを理由にその取替をすすめられて,その取替えをも含む上記工事を実施した場合,契約の解除は認められるか。

     イ 結論

       増改築禁止特約がある土地の賃貸借において,借地上の建物の補修工事に関し成立した和解条項の範囲をこえてなされた補修工事は建物の改築にあたるが,上記改築工事は借地人の土地の通常の利用上相当の範囲にあたり,かつ建物の耐用年数を延ばすとはいえ,工事の程度に照らし,賃貸人に及ぼす影響が著しいとまでは断定できなず,解除は認められない(東京高判昭和54年7月11日)。

  (7) 賃借人は賃貸人の同意を得ないで建物の増改築をしないこと,上記約定に違反したときは通知催告なしに土地賃貸借は当然解除となる旨の裁判上の和解が成立していた場合

     ア 問題点

       かかる和解が成立した後,建物の朽廃等を理由に賃貸人から賃借人に対して建物収去土地明渡訴訟が提起された。その訴訟継続中,裁判所の検証,鑑定の証拠調べの矢先に,賃借人が建物の主要構造部分の改修をした場合,契約の解除は認められるか。

     イ 結論

       建物収去土地明渡訴訟が係属し,その検証,鑑定等の証拠調べが近く行われることが予測される段階において,借地人が増改築禁止特約に違反して改築工事をしたときは,土地賃貸借について賃貸人,賃借人間の信頼関係を破壊するおそれがないとは到底いえず,解除は認められる(東京高判昭和54年7月30日)。

  (8) 増改築または大修善をするときは賃貸人の書面による承諾を得ることとし,これに違反したときは無催告で賃貸借契約を解除することができる旨の特約があった場合

     ア 問題点

       かかる特約の下,賃借人が建物の老朽化に伴う改修と他に賃貸するための改修工事を行った場合に,賃貸人が,賃借人の過去の増改築等の違反をも併せて理由にして契約の解除をすることが認められるか。

     イ 結論

       増改築許可の裁判を申し立てることができるようになった後であっても,増改築を制限する特約に違反して賃貸人の承諾を得ずになされた増改築がすべて解除原因となると解すべきではなく,上記条項による許可制度の存在を考慮したうえで,なおかつ増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり,土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため,賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは,解除権を行使することは許されないと解すべきである(東京高判昭和59年4月26日)。